鈴木 謙介(charlie):
文化系トークラジオ Life。今日は僕は4ヶ月ぶりの生放送で久しぶりにスタジオに来てるんですけれども、朝の4時までスタジオで生放送でお届け中。
テーマは「コロナ以後の『臨場性』を考える」ということで、やっぱり対面じゃないとできないなと思ったこと、むしろリモートのほうがいいかもと思ったことをメールでドシドシお寄せください。
ということで、メールいただいております。番組中にいただきました、ラジオネーム・イシケイ。「近内さん目当てで初めて視聴させていただいています。」ありがとうございます。いろんな意味でありがとうございます。どこに向けて言ってるか分かんないね。「大学の授業が事前に録画していたものを自宅で視聴する形でしたが、2週間前から登校が再開しています。一昨日下級生にコロナ感染者がいると発覚しましたが、私たちの学年だけは試験期間に突入しているので明日も登校せざるを得ない状況です。どうか試験も自宅で受けられるようにならないものかと思います。そもそも大学ですが、出席しても先生はレジュメを読み上げるだけ。生徒も単位を取るためだけに出席している友人から試験情報を共有してもらうためだけ。かくいう僕も出席数のためにカードリーダーに学生証をかざして退出する毎日です。このような日常わずらわしく感じるシステムを壊してもらえるチャンスをコロナが与えてくれるかもしれないと期待していましたが、大学はなかなか変わらないものですね。対面でなければ臨場性、贈与は生まれないと思いますが、それは Zoom のような画面を通した場合と実際に会った場合では性質は変わるのでしょうか。」
ということで、本当にいくつかそういう話出ていましたけれども、こういう状況でしかも行かなきゃいけないってどういうことだよという気持ちはとてもよく分かるのですが、たぶんそれはコロナとオンラインのせいではなくて、あの教授が悪い。
近内 悠太:
たぶんそういうような授業である時点で、方式は関係ないような気がします。
鈴木 謙介(charlie):
対面でも臨場性ないですもんね、これね。
近内 悠太:
読み上げてるだけならね。
鈴木 謙介(charlie):
昔ドイツの大学ってそんな感じだったらしいですね。大昔ね、19 世紀とかのやつっていうのは。だから昔の日本の大学教授の本とかを読むと、講義録ってなってるんだけども、論文棒読みの演説なんですよ。「何とかなのであります」っていう。
昔は大学ってそういうものでよくて、学生のほうも板書とかその人[=教授]はしないから、めちゃくちゃ速記者ぐらいの感じでメモってたはずなんですよ。そういう身体性が失われると、「こいつ、何しゃべってるだろうな」ってなっちゃうかなという感じがしますよね。
永田 夏来:
うちらの大学の頃はそういう先生まだいたね。
鈴木 謙介(charlie):
いたな、ギリギリいたな。
永田 夏来:
延々しゃべってて、特に板書もなし、みたいな。
放送大学のこととか考えると、きちっとコンテンツがあって、クリアすべき課題が明確にあって、先生が一方的に話すことで学びが深まるようなタイプの教育もあると思うんですよね。
村山 佳奈女:
代ゼミのサテライト講座的なものが、今予備校でもあると思うんですけれどもね。
鈴木 謙介(charlie):
なるほどね、そもそも伝わる情報とか伝えかたの組み合わせなので、1個の答えで1番これが伝わるとか勉強になるとかないっていうことかもしれないですね。
村山 佳奈女:
インタラクティブである必要が全部あるわけじゃないっていうのは、こういう社会になって感じるとこありますね。
鈴木 謙介(charlie):
それはあると思います。
近内 悠太:
大学教授で言えば、一応僕も教える仕事で特に高校で非常勤やったときにハッと思ったんですけど、「そうか、50 分間僕の権限で成績を付けるという権力のもと、この子たちを 50 分ここに縛り付けているのか」って思ったんですよ。
だとしたら縛られてるじゃなくて、「いたいからいる」って思ってもらえるような授業ってどうやったらできるかなっていうのは最低限僕いつも考えてて。たぶんそういう意識って前に立つ人たちには思ってもらいたいな。別に強制するわけじゃないんですけど。
他の場所で過ごす 50 分よりも、ここで過ごした 50 分っていうのが良かったなって思ってもらえたらいいなっていうのが僕のなかの1個授業をうまくできたかどうかっていうのを基準というか。
鈴木 謙介(charlie):
その「良かった」っていうのもいろいろ「良かった」があると思うし、教育であれば時間のスパンというか、その日は分からなくてもいろいろあると思うんですけれども。「良かった」って具体的にどういうことですか?
近内 悠太:
例えば同じ数学の内容であれば、家で自分でやったのよりも、より内容が面白かったとか分かったとか、何らかの意味でその子の脳が前の状況とは若干違くなったと。「ああ、こういう解き方だって分かった」とかって、脳みそが何か変化するというか、何かキックが入ればひとまずいいかなというか。
鈴木 謙介(charlie):
ご著書のなかの、アノマリーが贈与に気付かせるきっかけになるっていう話ですよね。「あれ、なんか違う」ってあるとき気付いちゃうっていうことですよね。
それがちゃんとあるといいんだけれども、渡るか渡らないか相手との関係性にもよるなと思ったのが――教育とはちょっと違うんですけど、ラジオネーム・青い悪魔、男性、トラックドライバーのかたです。
「個人宅配の荷物は印鑑かサインを伝票にもらえますが、ドア越しに『玄関前に置いておいておいてください』と言われることが増えたそうです。なので印鑑やサインはもらえません。顔も見ずにドアの向こうにお客さんがいるという『気配、臨場、ライブ、そこに居合わせる』を感じ、荷物を置いて次の家へ向かうそうです。ちなみにサインのところにはコロナと記入しておけば、なんとなく分かってもらえるらしく特に問題もないそうです。なのでこれからは宅配で出てるのが面倒だったり、ちょっと出られないときは『置いといてください』が普通になり、生真面目にサインしなくてよくなるかもしれませんし、昔は『笑顔もお届けします』なんて言っていた謳い文句も、ただ『お届けします』に変わりそうで、フェイス・トゥ・フェイスの配送の臨場性がなくなるのかな、なんて思ったりしました。」
ということで、これこそ市場の交換の関係性になってしまうと、できる限り効率的に、できる限りスピーディーに、できる限りスムーズにってことになってしまうという話ですよね。
近内さん、いろんな人間関係のことを考えるときに、関係性が――いわゆる市場の関係性には当然市場には関係性のメリットもあるんですけれども――[問題は]これがずれたときですよね。
例えば生徒は「金払ってんだから効率よく教えてくれないか」と思っていると。教師は「そういうことだけじゃないんだよ」って伝えたい、みたいな。「そういうことだけじゃないんだよ」っていうことを熱く臨場性のある形でしゃべろうとすればするほど、「うっとうしいな、この先生」みたいなことが起こったりもしますよね。もちろんその逆もある。「もっと人として接してほしいのに」――個人的によく見るのは、スーパーのレジとかで高齢のかたっておしゃべりしたいですよね、お店のかたとね。でも今こういう状況だからそういうわけにもいかずというので、「なんか冷たいな」ってなってるかたもいるかもしれません。
そう思うとすれ違い――一方は贈与で一方は経済みたいな――このすれ違いって間々起きそうな気がしません?
近内 悠太:
僕の場合は授業で教えるときに、単に受験で点数になる以上のものを忍び込ませるっていう感覚で、露骨にそれをやらないというか。生徒が面白そうって付いたらその話を振るんだけれども、基本的には「受験に資する内容だから」っていう、こっちが言い訳をするんですよね。
要はお金払ってるから対価を払ってるよっていう上で、でも「先生からもっといろんなことを教わりましたとか」ってよくあるじゃないですか。そのときに「いや、俺は受験のことを教えただけだ」っていうふうに言い張るのっていうのが大事なんじゃないかなと。
鈴木 謙介(charlie):
まったく同じことをしてますね。「いや、俺は何もしてないから」みたいなことすごい言うんですよ。
矢野 利裕:
本当はこれもラジオですら言っちゃいけないですよね。聞いてる可能性がありますから。
鈴木 謙介(charlie):
贈与と互酬性って言うんですけど、互酬性というのはもらったぶんだけ返さないけと平等じゃない感じがする。だからお互いに同じぐらい与え合わないといけないんだけれども、向こうが先に持ち出しを増やすと、何か返さなきゃ的になるというやつで。返す相手がくれた相手じゃないこともあるという話が、近内さんの『世界は贈与でできている』の本のなかで出てくる贈与の関係性のような気がします。
そのぐらいきちんと関係性が組み上がってるもの以外にもいろんなコミュニケーションの形はあって――ラジオネーム・ソマスター、女性のかたですね。「このたびの自粛続きで一番感じたのは世間話がしたいということでした。社員食堂でお昼を食べながら他部署の仲良しさん4人と世間話をするのが私の毎日の楽しみだったのです。子育てや親の介護の話、ドラマや映画の話、本や漫画の話、そして仕事の愚痴など、おしゃべりしながらお昼を食べるのが日課でした。それが今回のことで私は週3勤務、仲間は丸っと休業だったり1週間交代勤務だったりで、ほとんど会えなくなりました。そして全員が出社をするようになった今でも昼食は2部制でアクリル板が設置されたテーブルに間隔をあけて着席し、食事中の私語は禁止。いまだに世間話ができません。わざわざ LINE するほどのことでもないし、ものすごく必要な情報というわけでもありませんが、顔を合わせておしゃべりをするというのは私にとって大切な毎日のルーティンだったのだと気付きました。元の生活に戻れる日が来るのでしょうか。ただもくもくと食べて終わったらさっさと仕事部屋に戻る今の生活は息苦しくて仕方がありません。」
というものですが、ナッキー先輩。
永田 夏来:
無駄話はさっき Zoom の仕組みから考えても難しいところあるかもしれないですよね。Zoom 飲み会はたぶん関係性ができ上がってる人と一緒にやるだろうからちょっと違うのかなとは思うんですけれども。雑談大事だよねっていう。
村山 佳奈女:
この間一緒に雑談の試みをしたんですよね。
鈴木 謙介(charlie):
オンラインで雑談をするトライアル。
永田 夏来:
そうそうそうなんです。「#lifeお茶会」って言うんですけれども、私と佳奈女ちゃんとあとは倉本さおりとかと一緒に、ツイキャスで本当にワチャワチャしゃべるっていうお茶会というのをやっておりまして。
#lifeお茶会 – Twitter Search / Twitter
https://twitter.com/hashtag/life%E3%81%8A%E8%8C%B6%E4%BC%9A
鈴木 謙介(charlie):
ちなみにその人たち、対面でお茶会をした経験は・・・。
永田 夏来、村山 佳奈女:
ないですね。
永田 夏来:
はじめましての人も結構ある。
鈴木 謙介(charlie):
――のに、それが成立する。
永田 夏来:
うん。なんだけど面識ある人が多いっていうのと、Twitter とかでどういう考えを持っている人たちなのかとか、どういうものが好きなのかっていうことある程度分かってると話せちゃうっていうのはあるんですよね。私、facebook とか Twitter で友だち作るときに思うのは、会って話す以上にその人の感性みたいなものとか、普段の生活みたいなものを知っていることのほうが仲良くなる上でのフックって全然強くって。そういうのをお互いに何となく分かったうえで実際に会うと、好きなものの話とかでバーっと仲が深まるっていうのはあるかなと思いますよね。
鈴木 謙介(charlie):
なるほどね。分かりいい。Slack で僕それやってるので。Slack に趣味のチャンネルを勝手に作ってるんですけど、勝手に居場所にし出して、勝手に――例えば音楽チャンネルって言ってるのに――音楽と関係ない話で始まるみたいな。でもそういうところで出てくる人はお互いの存在感をそこで、「ああ、そういう人なんだ」っていうのが分かるし、僕は大変圧の強い人間なので僕の個人ブログが別のチャンネルであって、「あ、先生ってこういうことを考えている人なんだ」っていうのが、分からない人はもう全然分からない。知りたくない人は別にいいので「フォローリングもご自由に」「見たい人だけどうぞ」って言うんですけど、特に教員とかの言葉って重いから、「真意は?」みたいな感じで不安にさせたりもするので、できる限り本当はオープンにしたいなという思いもありつつ。
それこそさきほどの近内さんの話じゃないけど、「機能的なコミュニケーションだけでいいっす」みたいな人も当然いるから、そこらへんのバランスをどう作っていくのかは難しいんですけれども。オンライン雑談というかオンラインお茶会と言うか、そういうのが成立するのであれば、ぜひこれからも続けていただきたいと思っているわけなんですが。
永田 夏来:
私に言わせると、さっきの[リスナーメールの]ソマスターさんの話もそうだと思うんだけど、そういう上下関係とか役割関係がないところで自分の好きなものの話をするっていうことが雑談なんだと思うんですよ。だから例えば私が大学の先生で、そのほかのみんながライターでとか、「何とかで、という立場」で話をしてるじゃなくて、好きなものの話とか自分が感じたものの話とかをしているっていうのがお茶会というコンセプトで、すごく大事なとこなんだなと思いますよね。
村山 佳奈女:
あの、お茶を注いでる音を SE に使って、ポコポコポコ的な―――。
鈴木 謙介(charlie):
ほっこりするじゃん。
村山 佳奈女:
ほっこりするけど、そのとき食べてるおやつをお勧めし合うという番組になったので。次回が7月4日 15 時、おやつの時間からなので、その告知でした、これは。
鈴木 謙介(charlie):
そういう仕込みなんですね。別に仕込んでないけど。もう1回、7月4日 15 時から、どのような形でお茶会できるんですか?
永田 夏来:
#lifeお茶会 を見れば分かるという。
#lifeお茶会 – Twitter Search / Twitter
https://twitter.com/hashtag/life%E3%81%8A%E8%8C%B6%E4%BC%9A
村山 佳奈女:
ツイキャスから配信されるはずです。
鈴木 謙介(charlie):
なるほど。なので、インターネットに繋がっていれば、ポコポコ音が聞けると。
永田 夏来:
普通にわりとチャットとかも拾っていくので、みんなでワチャワチャしましょっていう集まりです。
鈴木 謙介(charlie):
いいですね。
永田 夏来:
charlie も来る?
鈴木 謙介(charlie):
いや、ちょっといいっす。
永田 夏来:
なんでやねん。
鈴木 謙介(charlie):
いや、ここなんですよ。こういう、井戸端会議的なもの、あるいは会社のなかの雑談、給湯室会議的なものってどうしてもジェンダー差があって。男子禁制みたいになっているところも当然世の中にはあるでしょうが、我々男性だと自認している側が急に「あ、いいっす」ってなるっていう。「“いい”とは?」みたいな問題って、めろん先生、入れます、そういうところ?
海猫沢 めろん:
僕は入りたいけど、入ることで何か問題が起きるんじゃないかなと、いろいろと。最近僕、育児本を出したんですね。
鈴木 謙介(charlie):
さっきちょっと告知していただいたやつ。
海猫沢 めろん:
これを書くときに難しいのが、育児において、男の人が育児のことを言うと絶対炎上するんですよ。それ何でかって言うと、平等じゃないからですよね、そもそも元が。やっぱり男性のほうが特に日本って絶対に優位なんですよ、いろいろな面で。
それを分からずに同じように「俺は分かってるぜ」っていうと超炎上するんです、よくしているんです。見ているんです、僕は Twitter を。いろんな IT 企業の社長とかがね、「なんか一人で育ててみたけど1週間楽勝だっただよ。」[とか書いていて、]「1週間」とかじゃねえんだよ、みたいな[炎上があるんですよ]。
鈴木 謙介(charlie):
――女性だったら。
海猫沢 めろん:
そういう見えないものの格差みたいなのがあって、それを分かるときって失敗したときなんですよ。失敗する前提で大丈夫だったらいいけど、みたいな、感じです。
鈴木 謙介(charlie):
永田さん、お茶会ってそういう失敗談というか、「私も苦労した」みたいなことを共有するための雑談って必要な気が・・・。
永田 夏来:
私 Life お茶会に関してはね、あんまり共感ベースじゃないところがいいなと思ってるんですよね。よく言うじゃないですか、「男の人は理知的にしゃべって、女の人は共感的にしゃべって、どうせワチャワチャ『分かる〜』とか言ってんだろ」みたいなレッテルに「ノー」を突き付けたいみたいな感じで。
ワチャワチャしゃべってても難しい話はできるんですよ。理路整然としてないとちゃんとしてないような気がするとかね、そこにこそそクエスチョンだからさ。ワチャワチャしゃべってるけど、トータルでちゃんとキュッてまとめてみたら、わりと異議申し立てとか、問題意識の提供とかやるはずですよ、将来的には。
村山 佳奈女:
豊かなおしゃべりでしたよね。さっきの Zoom の話もそうだと思うんですけど、結構シングル・タスクじゃないですか。たくさんの人がいるけれどもちゃんと話を最後収斂(しゅうれん)させていこうっていうふうな――。
鈴木 謙介(charlie):
ディスカッションだよね。
村山 佳奈女:
なんかワチャワチャ話すだけのスタイルもあっていいじゃないかって試みとしてやってます。今日いただいているメール見てるなかで、気兼ねなく話す場みたいな、「気兼ねなく」ってワードが2、3あって、何か結構 Zoom ミーティングって便利ですけれども、結構張り詰めたものを感じてる人もすごい多い気がして。そうじゃなくて気兼ねなく話せるオンラインの場ってどういうものなんだろっていうのはお茶会を経て、私も考えたことですね。
鈴木 謙介(charlie):
今の話で言うと、めろん先生は気兼ねしっぱなしですね。
海猫沢 めろん:
そうですねえ。僕臨場性の話について考えてたんですけど、ちょうど昨日ライブをしたんですよ。僕はバンドをやっていて、小説家の仲間と。[本屋の]B&B さん――今日どこかでスポンサーの内沼さんが出ると思うんですけど、内沼さんがやってる書店で――そこで B&B が引っ越しして、今本屋をあけられないのでイベントもみんなできなくて困ってるんだけど、そこに中継機材があって。僕らがそこでイベントをするとオンライン配信をして、見てる人はチケットを買ってそれを見るっていう。それでライブをやったんですけど、まさに無観客ライブなんですよ。
やったんだけど、スタジオでやってる感じがすごくて、お客さんいないから。練習っぽいなみたいな。臨場性はないかなと思ったんだけど、すごい不思議なことに、あとから遅れてコメントとかを見たときに、リレーで臨場感が来るみたいな。謎の自分疑似同期みたいなのがあって、ちょっと面白いなと思いましたけど。
で何の話だったっけ? 気兼ねの話、気兼ね気兼ね。
僕4ヶ月ぶりなんですけど、東京来るの、バンドメンバーと打ち合わせをしてたんだけど、知ってるから気兼ねはしないわけですよ。インタビューがこの間何回かあって、初めて会う人はちょっとやりづらいですよね、分からないから。新入社員問題と同じで。
鈴木 謙介(charlie):
どこで気兼ねしないところに行くかは、人によって違うと思うんですけど、何があった瞬間に気兼ねしなくなるんですかね。作家の仲間でバンドって相当気兼ねしそうな――。
海猫沢 めろん:
すごい難しくて、人間って会った瞬間に雰囲気で分かるじゃないですか。「あ、何か話しやすいな」とか。
永田 夏来:
大丈夫そうな相手とダメそうな相手と分かるよね。
海猫沢 めろん:
そうなんですよ。モニターだと微妙にそれが薄いですよね。情報量が削られてるっていうかね。そこですよね。何なんでしょうね。それはまだ定量化されていない何かですよね。
鈴木 謙介(charlie):
気兼ねしなくなるまでの個人差みたいなものは学生と接していてもめちゃくちゃ気になるところで、気兼ねする子はずっとそんな状態だろうし、当然そこで集団のなかで気兼ねしない子が増えれば増えるほど格差というかね、溝は深まっていくので。そこをどうやって集団としてその「一緒の集団だよ」っていうふうにするかって難しいなと。
これも「Session」に出たときにしゃべった話なんですけど、僕らみたいに一斉授業で生徒を相手にしたときって、この子が何か分からなそうだから、当てて「ちょっとしゃべって」って言ったときに、その子がしゃべってるときに別の子を絶対見てるじゃないですか。それが同時に何十人を臨場させていっぺんにその場の空気を掴むってことだし、ある子から出た質問を別の子に「それはね」って投げることによって三角形の形を作って教室をまとめるみたいなことを僕らは必ずやるんですよ。そういう形で作っていった場の空気みたいなものって結構強いし、逆にそれ作るのに失敗したとき悲惨ですよね。
村山 佳奈女:
すべての Zoom ミーティングに charlie を一人アサインしたい。ファシリテーションみたいな。
鈴木 謙介(charlie):
やだ。みんな忘れてると思うけど僕はコミュ障だから。役割上のコミュニケーションしかできないから。
近内 悠太:
一斉授業っていったときに、知窓学舎の場合は基本的に1クラス8人ぐらいか、多くても 10 人ぐらいにしてると。結構生徒のキャラとか立ち位置とかもあるし、他の生徒に気兼ねすることなく適当に言ってくれるっていう。
そういう子であっても、特に Zoom の授業の場合だとチャット欄で答えてくれたりっていう。普段声出すとすごくみんなが注目するんだけど、チャットでパッと書くだけだったら、っていうような子にとっては、逆に今までよりも参加できてるっていうか。今までだったらなかなか発言ができなかったけどっていうところがあったり。
クラス内で Zoom の授業とかでも理解度の差ができちゃうとするじゃないすか。そうしたら、[分かる子に]教える側にまわってもらうんですよ。その途中プロセスを――ノートの書いてるものは見れないので――言葉で頑張って説明してもらう。これは Zoom を通して言語能力を上げてもらおうってそこを裏テーマにもしちゃってて。数学を教えてるんですが、数学の内容を教えると見せかけて、実はそれをうまく他者に説明するという能力を裏テーマにもやっちゃってて。少人数だし前から教えてたっていうのもあって、生徒たちもうまく僕の意図を汲んでくれてて。
そういうような形でオンラインでも臨場感というか同じ授業に参加していたっていうのを何とか、工夫して立ち上げようとしているっていう。
鈴木 謙介(charlie):
多少理解差があってもそれを逆に活かしてまとめていくっていう形ですよね。コミュニケーションがとおったっていうのも、[番組の]最初に言ったとおり「伝わった気がする」としゃべってるほうも思っていて、聞いてるほうが「何か自分に伝えられてる気がする」みたいなふうに思っているっていうことがまず1つあって。それとは別に、その集団が「ここにいる人、みんな同じことを感じてそうだ」って思うことってあって。後者がやっぱりちょっとハードル高そうな気がしてきましたね。
特にライブ問題ってそれだと思っていて、お笑いの話でよくするんですけど、1人で聞いていて「ここは笑っていいところなのか」ってありますよね。みんなが笑うところって自然と自分も笑っちゃんだけれども、誰も隣りに客がいないなかでネタをやられて、「これは面白いのか」みたいな、ふうになると、お笑いやっておられるほうも聞いているほうも、新しい笑わせかた・笑いかたを探ることになっちゃいそうな気はするなと思ったりしております。
永田 夏来:
一緒の空間にいたら気持ちが通じ合うっていうようなこと自体もちょっと幻想なんじゃないかなと思ったりしますよ。
鈴木 謙介(charlie):
むしろ幻想ですよ。その幻想が共有できなくなったことが良かったか悪かったかって話ですよね。
永田 夏来:
さっきのメールで家のなかに一緒にいるから、キッチンの音が気になるって話ありましたよね。オリオン座のペテルギウスさんかな。掃除機とか洗濯機とキッチンとかの炊事の音が気になる。仕事の時間と家事の時間帯が重なるという話あったじゃないですか。これコロナ下で1つ大きな変化だと私は思ってて、仕事の場所と家事の場所が一緒になったということで公的領域と私的領域の区別がなくなったっていうことですよね。
だから仕事をしながらにして家事の様子が分かるし、家事をしながらにして仕事の様子が分かるようになってるわけじゃないですか。「意外にうちの旦那は Excel の表を作るのにめちゃくちゃ時間が掛かってて、あいつは仕事ができないじゃないのか」とか、そういう話をしてるのを私聞きましたけど。そうやってお互いに相手が何やってるのか分かるようになってくると、さっきめろん先生が言ってたみたいな、不当なバッシングっていうか、「お前は我々の苦労を知らないからそんなこと言ってるんだ」っていうのは知らない前提なんだけど、見える化していくことによって、知ってる前提に立ってどういうギャップを埋めていくのかっていう、建設的な話に移行できないかなと思ったりするんですよね。
村山 佳奈女:
夫婦で認識の歩み寄りがあったって話はよく聞きますね。
永田 夏来:
そうなんだ。
鈴木 謙介(charlie):
「コロナ下自粛で本性分かった」的な話は、本当にちゃんとそこで話をして仲が深まったっていうアンケートがあって。絶対生存バイアスだと思うんですけど。
海猫沢 めろん:
ネガティブなほうしか、聞いたことないです。
永田 夏来:
離婚の話はめっちゃ聞いた、逆に。
鈴木 謙介(charlie):
僕もこの番組が始まるつい一1間ぐらい前に教え子から、「コロナで彼氏と別れました」っていうメッセージが来ましたけれども、世の中はそういう人もいると思うけれども、一方で今まで共有していた共同幻想っていうのは、例えば会社なら会社とかっていうのがあって、家なら家っていう共同幻想があって、丸っとまとめて全部放り込んだときに、結局お互いしかいないから、お互いで調整し合ったりだとか、しないといけないっていうことが、起きたところは・・・頑張った。
永田 夏来:
そうなんだよね。だから結局効率よく仕事をするっていうことだけでは場っていうものが維持できなくって、一緒にいてホッとするだとか、顔見ててなんかニコッとするとかいうようなとこに価値が見出せた夫婦は、仲良くなって良かったね。
鈴木 謙介(charlie):
いろいろご苦労されたかたもいるかもしれない。正味コロナの影響だけじゃないと思うんですけど、今後本格的に社会科学の調査で誰かが明らかにしてほしいなと。
永田 夏来:
お互い今見つめ合った。コミュニケーションとか、時間の使い方とか詳しい人が・・・。
鈴木 謙介(charlie):
ここで1曲挟もうと思うんですけれども、永田先生、もうこれはかけたいでしょう。
永田 夏来:
かけたいです。かけさせてください。
村山 佳奈女:
Zoom で見ているかたはナッキー先生の T シャツが見えているかもしれないんですが・・・。
鈴木 謙介(charlie):
ブレてるブレてる。
永田 夏来:
これは私がブレてるじゃなくて、ロゴがブレてるんです。
配信が再開されて本当によかったです。Life でもいろいろ応援していただいて本当にありがとうございました。あと5月 15 日に発売になっているあの『音楽が聴けなくなる日』。あの集英社新書もぜひよろしくお願いします。私頑張って書きました。
ということで、電気グルーヴをかけさせていただきたいので、みなさんよろしいですよね。ありがとうございます。あと FUJI ROCK も延期で残念なんですけれども、これからも楽しみに臨場性を受け取りたいなと思っておりますということですね。それでは聴いてください。電気グルーヴで「富士山」。
<曲>
〔Part 2 はここまで〕